[A-004]MTRL HongKong

  • 2017-2018

香港島、起伏の激しい上環地区に建つ鉄筋コンクリート造の路面の長屋をドロップインできるオフィスに改修した。ローカルな食堂や漢方、乾物問屋に混じって、クラフトビールバーやカフェスタンドが並ぶ面白いエリア。

夏場は灼熱で湿度が100%にまで達する香港では、エアコンをガンガンにかけるために部屋を閉め切っているので、路面の商店なんかに入ると寒すぎたり、空気がこもっている感じがする。そこで食べた肉団子入の香港麺は最高だったけれど。

ほとんどの場合、長屋の奥がセルフビルドで増築されているのも面白い。面白いけれど、風通しが悪くなってしまったり暗くなったりと問題も多い。今回の敷地にも、例に漏れず裏手に小屋がへばりついていたので、まずはこの増築部分を切除して、大きな窓を開けることにした。風穴を開けたことで、部屋の中を気持ちのいい風が抜け、奥の方まで明るい光が満たしていく。

嬉しい誤算もあった。裏庭に面して大きな窓を開けたことで、それまで隠れていた、緑に覆われた高さ30mの崖が露出した。壮大な眺めを独占できる、贅沢な場所が現れた。

製造業にあまり力を入れていない香港で、地場の建築素材や製品を見つけることはあまり現実的ではなかった。

その代わり香港は、低い税率と自由貿易のもと、貿易拠点として世界経済的にも特異な立ち位置にいる。その流通のメリットのおかげで、国内外を気にせず色々なマテリアルやプロダクトを検討することができた。

ドアノブやベンチは飛騨で職人が仕上げたものをコンテナ船で運んできたし、カウンターの天板は大陸から持ち込まれたものだ。カフェスペースの壁には、香港の街中で見つけた玄関マットを貼りつけた。吹き抜けに設置したタペストリーや掛け軸みたいなサイネージは、フレームレスのものを深センで制作した。

地産地消にこだわらず、世界中から材料や設備などを取り寄せて使うことで、香港らしいハイブリッドな空間をつくることを考えた。

主要用途:オフィス
クライアント:Loftwork Hong Kong Limited
設計・監理:DOMINO ARCHITECTS
制作協力:株式会社飛騨の森でクマは踊る
写真:Gottingham

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