- 2017-
- Nagano
- Miyota


浅間山の麓、長野県御代田町。アカマツが群生する手つかずの広大な土地を5世帯で共同購入して、自分を含めた5世帯分の住居を建てる計画が立ち上がり、建築家として関わることになった。
建てるのは集合住宅やコーポラティブハウスではなくて、法的にはあくまで5軒の独立した戸建て住宅だ。共同購入した広大な土地は、世帯ごとに分割されてそれぞれが所有している。
5つの建築を同時に計画するということについて。
一人の設計者が全てを決めてコントロールするような進め方は、このプロジェクトには相応しくない。かといって、各々が好き勝手にセルフビルドで進めていくのも、どこか勿体ない気がする。各々の住まいや暮らしに対する価値観の違いが、それぞれの住居の個性として現れていてほしい、それでいてバラバラな住宅展示場みたいな場所ではなくて、全体としては群れとして認識できてほしい。そんな矛盾を抱えた絶妙なバランスを実現するために、どこまでを揃えて、どこからはブレてもよいか、議論を重ねて模索していった。
まずはじめに、重機が入る前に自分たちで仮伐採をしてしばらくテントで野営をしてみて、全体計画として敷地の中に住居をどう配置していくか、時間をかけて決めることにした。設計の入り方としてこんなに贅沢なことはない。どういう植物が自生しているのか、水はどう流れるのか、浅間山はどう見えるのか、陽の光はどう入って来るのか、どんな風が吹くのかを身体に染み込ませながら、敷地の真ん中を大きな庭に見立てて、それを囲むように住居を配置することにした。共有の庭には遊具やダイニングテーブル、サウナなどを作る。これからも、共同作業によって機能が追加されていくだろう。
建築のほとんどの部分、間取りや外構、エネルギーの扱いなどに関してはそれぞれが自由に決めている。特に内装には、それぞれの趣味が強く現れている。たとえばある住居では、内装にヒノキの合板を貼って、雲母の粉をまぶして仕上げている。夕焼けが西向きの窓から入ってくると、部屋の中をキラキラと真っ赤に染め上げる。
一方で建築を支える骨として、柱や梁などの構造の考え方は共通させることにした。そして屋根勾配、雨仕舞い、建具、外装材など、外観に関わるいくつかの要素を統一して、全員で使いまわせる共通の部分詳細図面と特記仕様書を作成した。それでも、こうした外観のルールも絶対的なものではない。後から庇を付けたり棚をつけたり、暮らしながらどんどん変わっていってよい。
なんとなく、ウルトラマンの家族みたいだなと思う。タロウにはツノが生えているし、セブンは肌の赤い部分が多い。エースはもみあげがカールしているし、ゾフィーにはイボがついている。それでも同じ遺伝子をもっている兄弟だということが一目でわかる。
ここにあるのは、場所で、建築で、建築群なのだねと、ある友人が感想をくれた。
強い全体計画が存在しない、かといって自然発生でもない、有機的でどこか場当たり的な設計プロセスが生み出した風景が、恐ろしくしなやかな、多様性と対立性とリアリティを突きつけてくる。
主要用途:戸建住宅(群)
設計・監理:DOMINO ARCHITECTS + MYTPJ
構造:江村哲哉
施工:柴平建設、真田建設、青木屋
写真:Gottingham


































































