[B-018]RAW

  • 2024

5つのプロジェクトについて、設計の過程で発生した複数のドキュメント(資料やメールのやりとり、図面やドローイング、現場写真)をそのまま束ねてフォルダに挟んだジーン『RAW』を制作した。装丁として使われているマニラフォルダは事務所で普段使いしているもの。

生ハム、生チョコ、生ビール。生麦、生米、生卵。生放送に生兵法。生っていったいなんだろう。そこにはどんな質感があるのだろう。新鮮さ?未熟さ?やわらかさ?どこから生で、どこから生ではなくなるのか。例えば設計に生の状態があるとしたら。ちなみに、「生」という漢字には読み方が158通りあるらしい。

そんな興味を詰め込んで、観察するための生ジーン。

RAW of RAW

ー 私たちは、ジーン『RAW』の制作に着手するにあたり、目指すべき方向性について強い意識を持っていました。建築雑誌によく見られる洗練されたプレゼン方法と距離を置き、これまでのプロジェクトの内容を特に加工せずに、洗練されていない状態で出版することを思い描いていたのです。そのような洗練さは「書籍」に任せて、ジーンの持つ荒さ、不器用さ、そして作り手のアマチュア的精神を取り戻すことを目指そうと考えました。これは、「通常はコピー機で複製される」というWikipediaのジーンの説明にも通じるものです。

ファイルをいくつか選んで、スクリーンショットを撮り、それらを非常にシンプルに印刷することで製本した『RAW』は、私たちがかつて知っていたジーンの形式のオマージュでもあり、今まで以上にブランド化された世界でのより多くの誠実さと正直さへのオードでもあります。ー

RAW of RAWより抜粋)

企画/編集/制作:DOMINO ARCHITECTS
印刷:KINKOS
部数:25部
価格:7777円(税込)
販売:ARCHIZINES FAIR 2024
写真:有本怜生

本造りは例えるなら、収録すべき写真や図面、テキストなどの生の素材が集められ、調理(編集)や盛り付け(ブックデザイン)によって、今にも食べたく(読みたく)なるような料理(本)を提供するようなものかもしれない。通常の出版物がプロのコックがつくる料理だとすると、Zineは賄い飯や屋台飯、家庭料理のような存在だろうか。もちろんどちらが良いではなく、私たちはどちらも食べたいのだ。それに対して「RAW」は、あまりにも「調理」がなされていないように思われる。ヘタだけ取った生の野菜やカットだけされた肉が(見慣れた食材も見たことのない食材もいっしょくたに)ドーンと皿に盛り付けられている。私たちはそれを目の前にして、一体どうすれば良いだろうかと戸惑うわけだが、結論から言えば、食べれるものならそのままの味を楽しんでもいいだろうし、これらから出来上がる料理の味はどんなものかと想像するのも良いかもしれない。ただし、各素材の味わいの総和が最終的な料理の味になるわけではないように、「RAW」に挟み込まれている一枚一枚が持つ独特の味わいは、完成した建築においては全体的な経験の中に溶け合っている。であれば建築を味わうとは一体何を意味するのだろうか。建築を味わうことの可能性と不可能性が生々しく問われている。

書評:川勝真一