[A-035]DAIKO Machining Office and Factory

  • 2024-2025
  • Kanagawa
    Kawasaki

川崎の工場地帯の一角。食器棚の部品から宇宙船の部品まで、世界に誇る金属加工技術でなんでも作れるダイコー精機製作所の工場を設計した。かつて私設の体育館として使われていた建物を再利用する計画。

敷地調査で建物の中に入ってみる。匂い、足音、質感、陰影。あたりまえだけれど、あらゆる気配がとても「体育館」で、どこかからボールの跳ねる音が聞こえてきそうな気さえする。

面白がって体育館の気配をしっかり残したまま、無理やり工場として使うこともできそうだけれど、いささか乱暴な感じがする。かといって、その気配を無視してまるごと空間をすげ替えるというのも、少しもったいない感じがするし、色んな意味でかかるエネルギーも大きい。

体育館の気配を丁寧に読み解きながら、しれっと最初からダイコーの工場だったみたいな気配に書き換えることができないだろうか。ちょうど、文書を都合よく改竄するみたいに。

改修でも、改造でもなくて、改竄。

そもそも体育館としてつくられた建物を工場として使おうとすると、やっぱりいろんな齟齬がでてくる。設計、加工、検査、管理、梱包、発送といった作業内容に合わせて部屋や家具、設備を配置していくとあっという間に床が足りなくなるし、大きい材料や重機が出入りするための経路もない。工場としてのふるまいと空間とが必要十分の関係になるまで、増築したり開孔したりして建物を調整していく。

内装を解体するときに拾った曲げガラスのスチールパーテーションは、新しい会議室の壁として使おう。壊した壁についていたかわいい木の開口枠は、新しく立てる壁で使おう。もともと備わっていたものを一度場所から切り離して、必要に応じて再配置していく。

壁の木材の温かい赤、テニスの練習板の鮮やかな緑、窓サッシの褪せた茶色。体育館由来の独特な色の組み合わせを参照して、フォトショップのスポイトツールみたいに新しく導入する素材や塗装の色へと展開していく。床のエポキシ樹脂やリノリウム、タイル、すのこやカウンター。カーテンに防火シャッターに外壁の吹付け塗装。スケールの大小問わず色の操作が空間に広がって、何が何を参照したのかが曖昧になっていく。テニス板の緑がエポキシの床に映り込んだのか、床の緑が板に染み込んだのか。

因果関係が捏造されて、偶然と必然の区別がつかなくなっていく。もともとあったのか、新しくつくったのか、移動しただけなのか、塗っただけなのか。そういったものがどうでもよくなった頃に現れる空間の質が気になっている。

主要用途:オフィス/工場
設計・監理:DOMINO ARCHITECTS
協働:プライムコーポレーション
金属加工:ダイコー精機製作所
家具協力:MAS | Karimoku
施工:プライムコーポレーション
写真:Gottingham