[A-010]MEGURO MARC HALL+STUDIO

  • 2019-2023
  • Tokyo
    Meguro

朝はあまり電気をつけないで過ごしている。

自然光で少しずつ部屋の照度が上がっていくのを感じる。天気や時期によって入ってくる光も微妙に違う。毎日繰り返し淡々とやってくる、部屋のコンディションが整う気持ちのいい時間だ。些細なことのようで、家や仕事場のように毎日過ごす場所にとっては、じわじわと効いてくる大事なことだったりする。

複合施設MEGURO MARC内のマンション共用部の設計を担当することになり、最初に驚いたのがラウンジの位置が地上階フロアの中央付近、自然光が一切入らない場所に割り当てられていたことだった。毎日利用する人も少なくないはずなのに。

そこで設計ではまず最初に、どうにかして自然光を部屋の中に引き込めないか、ということから考えた。

ラウンジのすぐ隣はガラス張りの店舗区画になっているので、ラウンジと店舗との間の壁に窓を開けてもらい、店舗に入る自然光のおこぼれをもらうことにした。全ての店舗から、ハイサイドライトを通して柔らかい光がラウンジの中に入ってくる。天井にアールをつけることで、横から入ってきた光が回って部屋の中に充満する。トンネル状の部屋の一番奥は吹き抜けになっていて、上階から光がトップライトみたいに降り注ぐ。

部屋の中央には柔らかいカーペットが敷かれていて、家具がお行儀よく整列している。それを取り囲んでいるテラコッタ・タイルの硬い床は時々家具になったり、壁になったりする。タイルの間のグレーの目地は時々棚受けレールになったり、棚板になったりする。

ネイビーのリノリウムが床に敷かれたスタジオでは、色々な使い方に合わせて色々な空間の仕切り方ができるカーテンのシンプルなシステムを考えた。カーテンの生地は少し透け感があって柔らかくて軽い。風が吹くと、ふわりとそよいで抜けていくのが気持ちいい。

長く使う場所、毎日使う場所だからこそ、光のうつろいや風のゆらぎの繊細な変化を感じるような、器として強度のある建築をめざした。

主要用途:マンション内共用施設
設計・監理:DOMINO ARCHITECTS
サイン計画:田部井美奈
プロジェクトデザイン:Tone & Matter
カーテンデザイン:久米希実 (Studio Onder de Linde)
施工:竹中工務店
写真:Gottingham

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